死後事務委任型信託契約
成年後見人が抱える問題の一つが死後事務です。
成年後見人の職務は、原則として、本人の死亡により終了します。
先般の民法改正により、成年後見人の権限が拡大されて、
弁済期が到来している債務の弁済や火葬・埋葬などについては、
本人死亡後であっても行うことができるようになりました(民法873条の2)。
しかし、家財道具の処分や墓石の建立、永代供養などの死後事務については、
成年後見制度では対応することができません。
そこで活用されているのが死後事務委任契約です。
成年後見制度では対応できない死後事務について、本人(委任者)の生前に契約を締結しておくわけですが、
こちらにも課題があります。
それは死後事務にかかる費用の受け渡し方法です。
生前に「預り金」として受任者が金銭を受け取る場合がありますが、
この預り金は、本人死亡により相続財産となり、
相続人との間で紛争が生じる可能性があります。(最高裁平成4年9月22日判決(金法1358号55頁))
この課題に対するひとつの解決策が、死後事務委任型信託契約です。
つまり、死後事務の委任者が信託の委託者となり、
受任者に対し、死後事務に充てる現金を信託するのです。
死後事務の受任者=信託の受託者は、
信託財産としての現金を死後事務の処理費用のために支出することができます。
参考条文
民法
(成年被後見人の死亡後の成年後見人の権限)
第八百七十三条の二 成年後見人は、成年被後見人が死亡した場合において、必要があるときは、成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き、相続人が相続財産を管理することができるに至るまで、次に掲げる行為をすることができる。ただし、第三号に掲げる行為をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
一 相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為
二 相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る。)の弁済
三 その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為(前二号に掲げる行為を除く。)
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司法書士法人equal
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