家族信託と遺留分の問題
司法書士法人Blue事務所(滋賀相続対策センター)が相続遺言に関する情報をお伝えします。
「信託をすれば、遺留分侵害額請求を避けることができる」という話を聞いたことがありませんか?
本当だとすれば、委託者や受益者にとっては非常に大きなメリットとなりますが、
実際のところはどうなのでしょう。
そもそも「信託をすれば、遺留分侵害額請求を避けることができる」という話が出た理由は、信託法91条だと言われています。
「信託法91条を適用し、委託者兼受益者が死亡したときは、その受益権は消滅し、
第二受益者は新たな受益権を取得すると定めた場合、委託者兼受益者の死亡により、その受益権は消滅するので、
その受益権が相続財産になることもない。したがって、その受益権については遺留分の問題は生じない」という考え方です。
しかし、信託法91条を使った信託契約の一部について、遺留分制度を潜脱する意図で信託制度を利用したものであり、
公序良俗に違反するため無効であるとする判決が出ました(東京地判平成30年9月12日)。
なお、この判決の後に民法の改正があり、遺留分制度に変更がありましたが、
この裁判例を覆すような影響のある改正ではありませんでした。
したがって、信託の設定にあたっては、遺留分侵害額請求にどのように対応するかも含めて検討が必要になります。
具体的には、①遺言等を用いて、遺留分権利者に遺留分相当額の財産を相続させるようにしておく、
②信託契約において、遺留分権利者も受益者とする、
③民法第1047条第5項の期限の許与を受けて、信託財産からの給付をもって分割払いする、
などの対応が考えられます。
委託者の意向を重視しつつも、万が一にも信託契約が無効となるような事態が生じないように、
どのような信託契約にするのかを検討しなければなりません。
参考条文
信託法
(受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託の特例)
第九十一条 受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から三十年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。
民法
(受遺者又は受贈者の負担額)
第千四十七条
5 裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、第一項の規定により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することがで
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